昨日、日本有病者歯科医療学会の学術教育セミナーに参加してきました。
ちょっと難しい内容になりますが勉強してきた内容について皆様にも少しお知らせしたいと思います。
テーマはガイドラインを基本とした抗血栓療法患者・薬剤関連顎骨壊死への歯科領域での対応でした。
医療業界では疾患に対する治療の仕方の手引書のような「ガイドライン」というものがあります。
ガイドラインは常に見直しが検討され必要に応じて亢進されていきますので学会や協会の呼びかけで新しくなったガイドラインがあれば随時私達医師・歯科医師も勉強して知識をブラッシュアップしていかねばならないのです。
今回は昨年新しくなったガイドラインの中の重要項目について4名の先生方が講義して下さいました。
一般的に言われる「血液がサラサラになる薬」とか「血の塊ができないようにする薬」とか「血管が詰まらないようにする薬」と称されているお薬を服用している方々に対して歯科治療を行うときの注意事項が書かれた本です。
一口に「抗血栓療法」と言いましても実は「抗凝固療法」と「抗血小板療法」に分けられていて脳血管疾患や心臓疾患を扱う医学部の先生方がどのような病気に対してどのように治療をし、何に注意して観察しているのか?を細やかに講義して下さいました。
歯科で使用されるお薬は使ってもいいのか?(飲み合わせの注意事)
歯科の処置において気をつけるべきサインは何か?安全に医療を行うための注意点を教えて頂きました。
医科領域で今後承認され広まっていく予定の新薬についてもその特徴と注意点を教えて頂きました。
脳梗塞、脳卒中といった脳血管疾患や、不整脈や心不全など心疾患を扱う専門家の先生方の貴重な講義は進歩発展が著しく素晴らしいと感じました。
我ら歯科医療従事者もそれに付き従って対等に患者様の医療情報を共有するため勉強をしなければ!と身の引き締まる思いでした。
午後は・・・
「骨粗鬆症や悪性腫瘍治療に際して使用される薬剤に関連した顎骨壊死」に対応するためのガイドラインについて勉強しました。
まずは整形外科の先生から「骨粗鬆症」と「治療薬」について講義して頂きました。
診断基準や治療法、使用する薬剤の目覚しい進化に驚きを隠せません。
新薬の選択基準や注意事項について知ると歯科治療に際して問診する方法にも工夫が必要だと感じました。
続いて2名の先生方から歯科医療従事者はどのように対応すべきかの講義が続きました。
この「顎の骨の壊死」に関する話題は時々新聞や週刊誌でも取り上げられるのですが・・・
医療は人の体の一部を見るのではなく全体を把握しなければいけないという意識の高まりが一般的にも広まってきましたね。
NHKで放送されている「総合診療医」の番組などでも見られるように「全体を診る」ということが社会でも注目されています。
骨粗鬆症の治療が必要(整形外科)
歯の治療が必要(歯科)
複数科のドクターが協力しなくては管理が立ち行かない疾患の一つが「薬剤関連性顎骨壊死」です。
「骨粗鬆症の薬を飲んでいる患者さんは歯を抜くと顎の骨が腐る」「だから歯は痛くても抜けない」
そいういう誤った認識・解釈で多くの患者さんを不安に陥れる危険性があることは以前から警鐘を鳴らしてきているのですが、未だにその傾向が消え去らない事に改めて気付かされました。
進行した歯周病や虫歯を放置したままでは骨粗鬆症の患者さんでなくとも健康被害は出てきます。
生活習慣病のコントロールが悪い人は骨密度が高くても骨折しやすいそうです。
つまり、生活習慣を改め口腔衛生を維持することで骨粗鬆症の治療も安全に管理されるということなんですね。
骨粗鬆症や悪性腫瘍の骨転移によって引き起こされる深刻な症状を和らげる為に使われるお薬ですが、そのお薬を長期間内服(注射)している患者さんは特に口の中においてはきちんと衛生管理しないとばい菌が入って炎症を起こしたときに容易に酷く進行し歯肉や骨が壊死してしまうケースが見受けられるのです。
こうならないように日頃の定期健診やクリーニングはとても意義のあることだということが再認識されました。
もし壊死がおこってしまった場合はどうすればいいのか?そんなことを学んで帰ってまいりました。
今回学んだ知識を今日からの臨床に生かし、安全で的確な歯科医療を行っていきたいと思います。
まさしく、健康は健口から!ですね。